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彼と彼女のパラフィリア◆04「彼と彼女の共通点」

響(ひびき)はゆっくりと下着とスカートをあげ、カバンから手鏡を取り出し化粧が崩れてないか確認する。
もちろん泣いた後なのだから、ある程度は崩れているが、泣くであろう前提でアイメイクを薄めにしてきたので、そこまで気にするほどでもなかった。
化粧が崩れていないことを確認した響は安心し、さっそくピアノの鍵盤蓋を開けた。
そのときだった、ピアノの上に置きっぱなしになっていた甲斐(かい)の電話が震える。

「ピアノの上は物置じゃないですよ」

響は甲斐の携帯電話を手に取ると、たまたま画面のポップアップが目に入った。

「昨日はごちそうさま?ボトル?ほう」

響はピンときた。
と言うかそれ以外ないだろう。

「響、コーヒー淹れたよ」

そんなタイミングで甲斐がキッチンから戻ってきた。

「甲斐くん、リサちゃんって誰?」

こわばった笑顔の響の手には甲斐の携帯電話。
甲斐は一瞬はっとした表情を見せたが、一人で勝手に納得したよう口調で話し始めた。

「付き合いで行ってるお店の子だよ。別に変な関係じゃないから心配しないでいいよ」
「どう言われても心配はするよ!お店って?キャバクラかなんか?」
「そんなとこ」
「意外だわ、キャバクラとか行かなくてもモテるでしょ?仕事も順調でお金持ちで顔もカッコイイし」
「うーん。なんかそうじゃないんだよね、多分話しても理解してもらえないと思うわ」
「行くのやめてよって言いたいとこだけど、仕事とか付き合いもあるだろうし…」

響には男の事情があるということは、身に沁みるほど知っている。
それを理由に遊んでいる男がいるということも知っているので、一方的に信用するというのは難しいものなのだが、自分の彼氏に限ってという思い込みも多少あるのだろう。

「じゃあそういう店に行く前には連絡いれるよ。心配なら俺ん家で待っててもいい」

ほう…。
甲斐くんは私の考えを見透かしているのか?

と響が邪推してしまうほど、甲斐の受け答えは響にとって完璧だった。

「コーヒーいらないの?」
「頂きますわよ。じゃあ甲斐くんはちゃんと連絡下さいね。嘘ついたらお仕置きだから!」

響は甲斐の弱みを握ったような言い方をすると、甲斐に一蹴されてしまう。

「俺はそんなくだらない嘘つかねーよ」
「言いたかっただけだし、男の子のお尻叩く趣味はないです…あっコーヒー美味しい」
「はちみつ入れといた。泣くと喉痛めやすいし」

甲斐は爽やかな笑顔で響に話しかける。

「今回は信じるけど、浮気しちゃダメだからね」
「響にとっての浮気ってなに?他の女の尻叩くなってこと?」
「え?は?違うし!」
「お尻痛いから無理って断って、まだ一度もセックスしてないのに浮気するなとは、ワガママ言うよな」
「だって恥ずかしいじゃん」
「彼氏にお尻ぺんぺんされて泣かされてるほうが、よっぽど」
「うるさい、ばか」
「口が悪い子はお仕置きかな?」
「甲斐くんがわざと意地悪したときは免除でしょ!」

響は恥ずかしそうな表情をしながらピアノの前に座り、曲を弾き始めた。
甲斐の記憶の中では耳にしたことがある曲だったが、タイトルが思い出せない。
響の演奏で時間が過ぎていく。二人にとって心地良い時間と空間の共有である。


──


『今日、飲みに行くことになったけど、明日の予定もあるし早く帰るつもり』

甲斐から来た連絡は、あまり嬉しいものではなかったが、明日会う約束を楽しみにしている響は、特に文句も言わずに了承した。
夕方から呼び出された甲斐は、内心つまらない気分ではあったが、昔からの知り合いであり先輩であるお得意様の相手をしなければならかったので、しぶしぶ楽しそうな対応を見せていた。
リサには同伴をせがまれていたので、先輩の好みの子を用意させ接待をする約束を交わし、四人で仲良く焼肉をつついていた。
連れてきた女の子がストライクゾーンど真ん中だったのか、先輩の機嫌も上々だったので、甲斐は一安心していた。
時刻は夜の九時過ぎ、日曜の新宿は平日に比べると人も多くないのでスムーズに歩けた。
焼肉屋から歩いて5分、リサの働く店が入ってるビルの真ん前でリサが突然焦りだした。

「リサ、携帯を忘れてきたみたい!焼肉屋に戻るから、先入っててもいいよ」
「すぐだろ?タバコ吸ってここで待ってるから、気をつけて」

甲斐たちは、ビルの向かいにこじんまりとしたタバコ屋にある灰皿の前を陣取って、リサの戻りを待つことにした。

「甲斐もタバコ吸って酒飲める年になったんだもんな、俺も年をとるわけだ」
「もう21ですよ。って俺のカテキョしてたころの先生ってこんな若造だったんですね」
「お前ほんと生意気が服着てるよな。生徒だったら宿題倍にしてやりたい」

と二人の談笑は続いている。
そのときだった。
甲斐はビルに近づく男女の姿を目にすると、我が目を疑った。
髪はゆるく巻き髪にして、化粧もかなりきちんとしていて人違いかと思うほど違ってみえたが、背丈や歩き方、持ってるカバンが同じなので響なのではないかと直感が働いた。

「ね、ね、あの子どこの店の子かわかる?」

リサが連れてきた女の子に聞いてみる。

「えー浮気ですかあ?リサちゃんにチクっちゃおう!」
「なになに、リサがなに?」
「甲斐くんがね、下の店のナンバーの子、名前なんだっけ、清楚系の子が気に入ったらしいの!」
「へー清楚系?」

リサはどこからどう見ても「THE・キャバ嬢」なので、嫌味っぽく甲斐に言ってきたが、彼はそんなことは気にも止めていない様子。

「その下の店の子の名前わかるの?わかんないの?」

冷たいモードに入った甲斐の声の静かさにリサは勘付いたのか、慌てて嫌味っぽいそぷりをやめ普通のトーンで答えた。

「下の店でナンバーの清楚系だと、多分キョウコちゃんって子だと思う」
「へぇ…キョウコちゃんね」

世間というものは広いようで狭いらしい。
甲斐は顔色ひとつも変えずにそう呟きながら歩きだし、ビルのエレベーターのボタンを押す。
そして四人は揃ってリサの店に入っていった。

へぇ。

少し違和感があった部分がこの一件で、自分の頭の中で繋がったのはすっきりした気持ちではあったが、甲斐にとってもちろん簡単に許せる話ではないのは語るまでもない。


──


『そろそろ解散するし、今から俺の家に泊まりにこない?』

甲斐からお泊りの誘いなんて初めて来たものだから、興奮した響は思わず席を立ちトイレに行くふりをして、洗面台の前で返事を考えていた。

同伴してきたこの客を帰らせたら、体調悪いとか言えば早上がりさせてくれるだろうけど、髪セットしてるし、勝負下着じゃないし、お泊りセットも持っていきたいから…。

と携帯の画面とにらめっこしていると、甲斐から電話がかかってきた。

「もしもし?甲斐くん、どうしたの?」
「俺、今新宿なんだけど泊まりに来れない?」
「バイト終わったんだけど、汗だくで着替えもないから一旦帰ってから行ってもいい?」
「終電なくなるじゃん」
「甲斐くんのためならタクシー使う!」
「へぇ」
「すぐ準備するから待ってて!切るね」

響は急いで指名客の席へ戻った。
客には明日の朝、急にレッスン振り替えてほしいと頼まれたから、今日は早めに帰りたいと伝え会計をボーイに頼んだのだった。
響ら客のお会計を済ませ店の入り口まで送ると、今日はありがとうね、と定形の言葉を並べ早々に追い出してしまった。
一息ついたところで、ボーイから声が掛かった。

「キョウコさん、ご指名のお客様です」
「え?誰?」
「俺も初めて見る人。若造だったよ」
「私もう帰りたいんだけど…」
「それはお客さんに相談して」

ボーイに連れて行かれた先に座っていたのは、最近毎日夢に見るくらい大好きな響の彼氏だった。

「え…え?…なんで?」

呆然と立ち尽くす響に、甲斐は手招きをした。
もちろん甲斐は無表情である。
店に変に勘ぐられるのも面倒なので、甲斐は無表情をやめ作り笑顔で響に声を掛けた。

「座んなよ、キ・ョ・ウ・コちゃん」

キョウコこと響はなにも言葉は発せず、大人しく甲斐の隣に座る。
黙っている響の目を見て、ニコニコしながら甲斐はゆっくり話し始めた。

「俺さ、すごくいいアイディアを思いついたんだよ」
「…怒ってる?」
「仕事だろ、そんな顔すんなよ」
「俺も普通の客と同じ金払ってここに座ってるの。まさか、そんなつらそうな顔見せて指名取ってる?それならもっと怒るわ」
「こんな顔で営業しないし…」
「だよな、じゃあ店なんだそ普段通りの表情で俺にも接して」
「うん」

こわばってた響の表情が少しやわらいだ。
甲斐の軽快なトークのおかげで、響は気持ちが少しずつ落ち着いてくる。
今まで過ごしたことのない環境での二人の時間は、あっという間に過ぎていくのだった。

甲斐は非凡な才能を持っていると、自分でも理解しているが、それ以上に周囲からの評価されているようだ。
響もそのうちの一人である。
甲斐とは軽快に楽しく話していると、知らず知らずの間に問題点や嫌なことを忘れさせられるのだ。人を誘導することで自分のペースで操れるのだから、評価と同じくらい僻みや悪意も生まれてくるのだろう。
本人は決してその技術をひけらかすことはないのだが、相手にすると完全に彼のペースに巻き込まれるので、彼の存在を意識しないわけにはいかなかった。

結局、響は甲斐の酒の相手をするという名目で、一緒に飲み始めてしまった。
甲斐のお気に入りはウイスキーをコーラで割ったウイスキーコーク。響はつられて同じものを飲んでいる。
もちろんそのウイスキーは甲斐がボトルをいれたものである。
彼氏が自分を指名して自分の売上になるようなオーダーをしているという、なんだか変な気持ちがなかったわけではないが、初めて甲斐とお酒を飲めたので、響は上機嫌であった。

「そろそろ閉店だろ」
「えっ?もうそんな時間?」
「さっきボーイが来たときに支払い終わらせた」
「ごめん、甲斐くんと飲んでて楽しくなって酔ったみたい…」

響はとろんとした目で甲斐を見つめる。
わざと響の耳元で甲斐は囁いてみた。

「このあとは俺の家にくるよな?」
「…うん」

甲斐の言葉に響の酔いは、一気に覚めてきたようだ。
店で青ざめるわけにはいかないので、普段通りのキョウコを演じて甲斐を送り出し、その足で更衣室に入り素早く着替え始めた。
なぜ素早く着替えているかというと、ドレスを着ているときに下着のラインが出ないようにTバックを履いている。だがこないだのお仕置きの痕が、まだ少し残っているので人に見られないようにと、素早く着替えていたのだ。

「…またお仕置きかなぁ」

小さく呟きながら、自分のお尻をなでている。
はあ…と、響は大きなため息をひとつついて店を出た。

二人で乗ったタクシーの空気の重さはまるでお通夜のようだった。
甲斐は響の手を握っているが、響からするとこの手が自分のお尻を痛くするのかと考えてしまい、気が散っていちゃつくこともできないのである。
さすがの都会である東京も日曜の夜中にもなると、道路もすいすい進めるので悩む暇もなく、あっという間に甲斐のマンションまで着いてしまった。

「響、酔いは覚めたか?」
「…もう酔いはさめた…甲斐くん怖いよ」
「俺はこないだから何度もお尻叩かれてるのに、まだ隠し事しようとするお前のほうが怖いよ。俺のこと試してるの?」
「…そんなこと」
「そんなことないか。俺さ響に舐められてるのかなとか、色々考えたけど、多分ね、まだまだ躾が行き届いてないだけなんじゃねーかって。ほらピアノの初心者が反復練習で上達するのと一緒で、お仕置き初心者も反復してお仕置きしたら体が覚える」
「そんなこと…」

慌てて否定した響の言葉を遮るように甲斐は冷たく言い放つ。

「そんなことないなら、響はキャバクラでバイトしてたのを隠してたこと、悪くないと思ってるんだ」
「…ちがっ…」
「それならもっとキツく躾けないとダメだな」
「隠してたのは悪いと思ってるの。軽い女だと思われたくなかったし…」
「響が悪い子のときは、どうされるの?」

響は悩ましい表情を見せ、甲斐から視線をはずした。

「…お仕置き?」
「やっぱり躾が足りないんだな。話してる相手の顔を見ろよ」
「…ごめんなさい」
「もう一度聞く、響が悪い子のときはどうなるの?」
「お尻、叩かれる」
「誰から?」
「甲斐くん」
「わかってんじゃん、こっちおいで」

甲斐は響の手首をぎゅっとにぎって、ひきずるようにベッドまで連れて行くと、自分はベッドに座り響を膝の上に乗せた。
丈の短いワンピースの裾はあっという間にめくりあげられ、セクシーな黒のレースのTバックが露わになった。

「お仕置きしやすいように、こんな下着はいてきたの?んなわけないな」
「やだ…恥ずかしいよ」
「大丈夫、Tバックでも下着は脱がしてお仕置きするから」

なんの大丈夫なのか、響にはまったくわからなかったが、下着を脱がされるのは全然大丈夫ではなかった。恥ずかしくて恥ずかしくて、いつも痛みと羞恥心で涙が出ているのだ。
甲斐の平手が響のお尻をゆっくりと染めていく。

年下の彼氏の膝の上に乗せられて、泣いても許されずに真っ赤になるまでお尻を叩かれているという恥ずかしい状況。
甲斐と出会う前までは妄想していたお仕置きだが、現実に数日おきにお尻を叩かれるのは想像以上に痛くて恥ずかしい。今となっては普通の恋人同士みたいな甘い関係を築きたいと思ってはいるものの、自分の配慮の足りない行動で叱られているので我慢してお尻を叩かれるしかないのだろうかと、響は考えていた。

痛くてお尻を庇いたいけど、手で庇ったり勝手に動いたりすると、もっと痛くなるのはわかっているので、響はなるべく耐えるように我慢していた。
甲斐の平手で響のお尻がまんべんなく赤くなってきた。
回数で言うと50近く叩いたのだろうか、甲斐はまだ許すつもりはなかった。

「道具を使って一週間くらい椅子に座るのがつらくなるお仕置きと、恥ずかしい体勢でのお仕置き、どっちがいい?」

甲斐が提示してきたのは、究極の選択だった。
毎日ピアノの個人練習は必須だし、バイトでは座ってにこやかにお話しなければならないので、痛みが長く残るのは避けたい。
そもそも手でお尻を叩かれただけで三日くらいは軽い痣が残ることもあるのに、それ以上に痛いのは相当厳しいと思う。
響は一瞬悩んだが、お尻が痛くて練習サボっても叱られるわけだから、選ぶ余地はなかった。
自分から言うのは本当に恥ずかしくて、響は声を震わせた。

「…は、恥ずかしいほうで」
「お願いしますは?」
「恥ずかしいほうでお願いします」

Sスイッチの入った甲斐に逆らっても勝てるわけがないので、しぶしぶ彼の言うとおりに響は復唱した。

「じゃあ膝から降りて、ここに仰向けになって」

響は甲斐に言われるがまま、ベッドに仰向けに寝転がる。叩かれたばかりのお尻がシーツに触れると痛くて顔を歪めた。
そのときだった、甲斐は響よ両足首を左手でひとまとめにして、顔の前まで引き上げた。
赤く染まった響のお尻は天井を向いた。突然のことで、響は混乱したが、下手に動くと甲斐に恥ずかしい部分が丸見えになるかもしれないと、必死に内股に力を入れて両足が開かないように我慢した。

「力んで隠してるつもりみたいだけど、俺からは丸見えだよ」
「やだ…恥ずかしい…みないで」
「恥ずかしいお仕置きを選んだのは響だろ」

顔の前まで両足を掴まれたまま引き上げた状態で甲斐はいつもの強さで響のお尻を叩く。
重力の作用で普段、お尻についている脂肪が背中のほうに下がっているので痛みは強い。
甲斐が右手を振り上げた瞬間、響はぎゅっとお尻に力をいれて平手が落ちてくるのを待った。

あれ?

と思い体の力を抜いた途端、バシンッ!と大きな音と痛みが響のお尻を襲った。

「この体勢、俺が手を振り上げると、響のここがぴくぴくしてぎゅっと締まるのがすぐに見えるから、恥ずかしくて痛いお仕置きができるんだよ」

そんなことを言いながら、甲斐は響の割れ目をさらっと撫でる。

「…ぁ…ん」
「お仕置きしてるんだけど、なんでそんなエロい声だしてんの?」

甲斐は容赦なく、響のお尻の真ん中を狙って平手を連打で叩き込む。

「あぁん…ごめんなさい」

本当は足をバタバタさせて逃げたいところなのだが、足首はがっちりホールドされていて、響には逃げることすらできない。

「自分で両膝の裏を持って」

甲斐は響にM字開脚で膝を自ら抑えさせると、ソファからクッションをいくつか持ってきた。
クッションは響のお尻の下に入れた。そうすると嫌でも隠すことなく響の恥ずかしい箇所は、すべて照明の下で照らされるように見えてしまうのだ。

「響の恥ずかしいとこも赤いお尻も泣いてる顔も全部見れる」
「甲斐くんの意地悪…」
「隠し事したのは響だろ、お仕置きされてるんだから口には気をつけなさい」

甲斐は恐怖と羞恥心でいっぱいの響の顔を見ながら、すでに赤くなったお尻をきっちりと叩いていく。
響も甲斐も、このときの状態の相手の顔を見ることが今までなかったので、互いに新鮮さを感じ、いつも以上に甲斐の支配欲は満たされ、響の羞恥心が原因で意識を失いそうになっていた。
甲斐の平手は、普段当たったことのない響のお尻の割れ目あたりを狙って叩いている。
強さはそんなに強くないものの、恥ずかしくて恥ずかしくて涙がこぼれてきても、膝から手を離すことは許されなかった。

「今日はごめんなさいが全然聞こえないけど、反省できないってことだよな?」
「ごめんなさい。反省してる。恥ずかしくておかしくなりそうなの」
「恥ずかしいお仕置き受けてるんだから当たり前だろ、あと十回叩くから一発ごとに俺の目みて、ごめんなさいって言って」
「…はい」

表情は冷たいが怒りの熱を隠しきれない甲斐は、振り上げた平手のスナップをきかせてエネルギーが分散されないように叩き込むように響のお尻に打ち付ける。

「…っごめんなさい…ごめんなさいい」

響は膝から下の足を少しばたつかせていたが、甲斐は気にすることなく響の左右のお尻を交互に叩いていく。
いくら感情的になっているとは言え、大事な彼女の体を傷つけるわけにはいかないと、叩いているときはかなり真剣に集中しているのだった。

「…ごめんなさいっ…ごめんなさいぃ!」

宣言通り十回叩き終えた甲斐は、大きなため息をつくと、寝転がっている響の隣に寄り添うように横になった。

「足さげていいよ」
「でも、お尻痛いもん」
「なにそれ、俺を誘ってるわけ?」
「な、違うし!ばっかじゃないの!?」
「口の悪い子にはお尻ぺんぺんだな」

眠そうな声になっている甲斐は軽く響のお尻を叩いた。
途端に響はふくれっ面をして、うつぶせに寝転がる。
もちろん痛みと腫れで痛いので、下着はまだあげることができない。

「ねぇ甲斐くん、お仕置きなんだけどさ」
「響に必要だと俺が思ったときにお尻叩くのはやめるつもりないけど、なに?」
「あは…なんでもないですぅ」

響は図星をつかれて言葉を失いつつ苦笑いをした。
甲斐は少し伸びをするとベッドから起き上がる。

「酒抜きたいからシャワー浴びるけど、酔い覚めてるなら一緒に入るか?」
「…いや…恥ずかしいし」
「汗ばんでるやつは床で寝てもらうけど、それでもいいなら」
「私一人でシャワー浴びるって選択肢はないの?」

聞かずとも答えがわかるような質問に、甲斐はもちろんにこやかに答える。

「あるわけねーだろ」
「だよね」
「俺と一緒に寝たくないわけ?」
「そんなこと…ない」

響は甲斐の優しくエスコートされて風呂場に入っていった。
次の日、二人が目が覚めた頃には夕陽が傾いていたのは語るまでもない。
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