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でもだって

ベッドとソファがおいてある一室。建物の外観はいわゆるラブホテルと言われるような街の風景にそぐわない派手な赤色をしている。ホテルの名前にはファッションホテルと頭についていて、ラブホとは少し何かが違うのかもしれない。そんな名前など気にしている人間が利用することはあまりなく、疑問に思うことすらないだろう。

部屋は薄明かりのみで、ソファに手をついて尻を突き出した20代半ばだろうか、どちらかといえば綺麗系といわれる女と、革のベルトを半分に折りたたんで両端を手に持ち振り上げ、彼女の尻に思いっきり打ち下ろしている長身でスリム体型の男がいる。
女の上半身は着衣をしているが、下に穿いていたであろう服はふくらはぎから足首にかけて絡みついており、下半身は丸出しになっている。

「8」

男の声は低く冷たい。
まるでモノをカウントしているかのような、つぶやきに似た物言いのあとすぐだった。ヒュッとベルトがしなる音がしたかと思うと、その後すぐにビシィッと革と肌がぶつかり合う、耳に慣れない音が鳴る。

「はちひぃぃ」

一生懸命に耐え、数をかぞえることに集中している彼女の尻は、すでに平手でうんと叩かれたのか、ベルトの痕の下は尻は全体が赤く腫れている。元の肌の色がわからないほど真っ赤に染まっている尻は、さわるだけで熱をもっていそうだ。

ベルトで叩くと、肌の表面が一瞬で苛烈な痛みと熱を与える。
次の一打がくるとわかっているので、力んで切れ長の綺麗な目元はぎゅっときつく閉じられている。

「9」

女は「ひっ」という我慢していても、つい声が出てしまう。

「……き、きゅう」

男の手が止まった。
手が止まったとはいえども、決してお仕置きが終ったわけではない。
一般的には聞こえる声でも、彼が指示を出した「はっきりと数える」が出来ていなかったので「聞こえない」と冷たく言い捨て、さっきより一層痛そうな音が部屋に響く。

「き!きゅう!!」

女は「聞こえてるだろうに、意地悪な奴」と言わんばかりに大きな声で九つ目を数えた。

彼女がお仕置きされている理由は、とても可愛らしいものだ。ここまでひどく赤くなるまで尻を腫らして、目には涙を浮かべさせてまで反省を促すほどではない。
ただ彼らの約束事では、彼女が悪いことをしたら彼が尻を叩く。いわゆる躾でのお仕置きが存在する。そんなちょっと普通と違う関係である中、彼らは恋人としてお付き合いを続けている。

「っじゅうぅ!」

最後の一打だったのか、彼女は大きな吐息とともに、はっきりと10を数えた。はぁはぁと肩で息をしているのが、目に見えてわかるが、彼女はまだ動こうとはしない。無惨にも赤く染まった尻を今すぐにでもさすりたいと女は思っていても、まだそんな勝手な行動は許されないらしい。

「コーナー。そこに立って」

男はソファの隣の壁際を指差す。
コーナータイムを言い渡された彼女は、彼の指示通りにソファの脇に壁に向かって立つ。
コーナータイムとは、文字通り部屋の隅や壁際で過ごす時間のこと。この指示を受けたときは、尻をさすったり余計な動きをするのすら許されず、ただ立って反省をするしかできないので、精神的にかなりつらい時間だと言える。

「なんで今日はお仕置きになったの?」

壁しか見えない彼女の後ろをゆっくりと歩いている彼の気配だけを感じる。
「そんなのさっきから何回も言ってる……」と心の中で思いながらも、反抗してこれ以上お仕置きが増えるのだけは避けたいと、女はさも反省しているかのように真面目に答える。

「仕事……休んだ」

真面目に答えているつもりなのに、彼からのきつい平手がバシッと尻に叩き込まれる。

「ちゃんと言いなさい」

悪かったのは、お仕置きされた理由は女自身も馬鹿だなと、自分なりに反省はしている。
ここ1ヶ月近く彼の仕事が忙しくてなかなか会う時間がとれなかった。彼がたまたま時間が空いて休みになった本日、週のはじめの月曜日、業を煮やした彼女は思いつく理由を全部並べて、ワガママ言って困らせて、無理やり彼の休みに合わせて仕事をズル休みしたのだった。

それを聞かれたのに、まだ彼女は

「でも、仕方ないじゃん……反省はしてるけど」

こんな調子の言い訳が続いている。
コーナータイムだからか、彼の表情が見えない分、彼女の言い訳もヒートアップしてきた。
彼は足を止め、はぁとため息をひとつ。

「もう一回はじめからお仕置きやり直しだな」
「……はぇ?」

予想外の発言が聞こえたようで、彼女は目をまん丸くして彼の方を振り替える。
彼の表情はいつも以上に冷たく、見ているだけで怖くなるようなオーラが見えるような気がした。

「えぇ……反省してるって」
「そんな風にオレは躾けてるつもりはない」

涙ぐみながら彼女は彼の怒りを鎮めようとするが、何を言っても無駄であろう空気が部屋中に広がっている。

「悪いのは誰?」
「ワタシ」
「そう、キミだろ」

また、ベッドに腰掛けた彼の膝の上に腹ばいになるように指示され、大人しく従うほかなかった。
またイチからお仕置きなんて……すでに彼女の尻は平手で300近くは叩かれてるはずなのに。恐ろしくてこのあとのことは想像できなかった。

「お尻痛くて明日も仕事休む!座ってられない!!」

ビシバシ容赦ない平手が、真っ赤な尻をより赤く染めている間に、彼女が投げやりに叫ぶ。

「そんなことしたら、一週間は座るたび思い出すくらいお仕置きする」

ハハハっと軽快に笑う声と、容赦ない平手が尻を叩く音が部屋中に響き渡る。
お仕置きはまだまだ終わらなさそうである。
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