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彼と彼女のパラフィリア◆01「彼と彼女の出会い」

音大在学のキーのキョウコと言います。
最近、色々となまけてしまっていますので
厳しくお尻を叩いて叱ってくれるかた募集します。

──

寂しさを紛らわすために、色々なことに手を出していた。

酒、タバコ、買い物、美容、男。

どれもその時間だけは充実しているような気がしていたが、あくまでその場しのぎとして利用するしかなかった。
どんな人間でも一人は寂しいものだ。
失ってしまったものは、どれだけ自分が一生懸命になっても手に入らないのが自然の摂理というもの。
唯一の肉親であった両親が痛ましい事故で亡くなってから早五年。
一人で生きていける知識や頼れる仲間に恵まれてはいるものの、それだけでは心の中が満たされるわけもなく、ただ毎日をおざなりに過ごしているだけであった。

そんなどうでもいい毎日を過ごしているとき、たまたま目についた単語があった。

『スパンキング』

厳格そうな表情の男性の膝の上で、腹ばいになった女性がお尻を叩かれている画像の説明に書かれていた単語だった。
しかもその女性はスカートをめくられ下着をおろされており、お尻はたくさん叩かれたであろう赤く染まり、表情は苦痛に耐え今にも泣き出しそうであった。

その画像を目にした時、彼女は懐かしく苦く暖かい気持ちが胸を高鳴らしたことに大きな衝撃を感じた。
それからというもの、どうでもいい毎日の中で考えるのは『お尻を叩かれて叱られたい』という欲望で、時間があればインターネットの検索で『スパンキング』について調べて読み耽っていた。

抑えきれなくなった欲望は行動を促す。

突発でパートナー募集をしてみたところ、信じられないくらいのメールが飛び込んできていた。
一通一通丁寧に読んでみると、様々な種類の人がいることがわかる。
SMの入り口みたいな扱いで考えている人。
征服欲を抑えきれていない人。
一人ひとり性格が違うように、性的倒錯も多種多様に渡る。
不思議なものだなと考えながら、読んでいた一通のメールが目に止まった。


──


日曜日の夕方。
渋谷駅のハチ公前という、待ち合わせ場所なのに落ち合えないという難易度の高い場所で待ち合わせをしていた。
ピンクとベージュの花柄の膝丈ワンピースにカーディガン。鎖骨にかかるくらいの長さの黒髪で、誰から見てもお嬢さん風の彼女の名はキョウコ。

今日という待ち合わせに至るまでに、メールで毎晩やりとりをしていた。
お互いの意見を尊重しやすいのか、互いの文章表現がわかりあえるのか、ある程度の長文でのやりとりを続けていた。
一言一言返答を繰り返す短文のやりとりよりも、長文のメールでは互いの個性や考え方、配慮を感じることが出来たので、スパンキングの目的が完全に失われたわけではないが、彼がどんな男性なのかキョウコは彼と会ってみたくて仕方なかったのだ。
キョウコはしきりにスマホを気にしているようだ。
家を出る前に鏡の前で、今日の服装がわかるように自撮りをして彼に送っておいたのだが、この人混みでは会えるのか心配になってきたのだ。

キョウコは不安げな表情をしながら、周囲をキョロキョロと見回していたものの、彼の顔も服装もわからないので徒労に終わってしまう。

「はあ…」

キョウコの口からため息が瞬間だった。
後ろからトントンと肩を叩かれたので、驚きつつ振り向いてみた。

「キョウコちゃん?」
「…はい」

振り向いた先にいたのは、とても可愛らしい男性だった。
身長は日本の男性平均に届かないくらい。少し細身に見える。特徴の中でなにより顔が整っているのが際立っている。

「カイです。はじめまして!」
「……」
「ん?どうかした?」
「大丈夫」
「そっか。じゃあ行こっか」

キョウコはカイと名乗る彼の姿に見とれてしまっていた。
普段の生活で男の人と話したりする機会は多いので、キョウコが男に見とれてしまうという衝動はにわかに信じがたかった。
颯爽とリードしてくれるカイに心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。

カイと交わしたメールから感じていた、彼のイメージは理知的で包み込んでくれそうな男性像だった。
表現や言葉選びから安心して心を開いて叱られてみたい。
と思っていたのだが…。

色々なことがキョウコの頭の中を巡っているうちにラブホテルの一室に連れられてきていた。

「さて、覚悟はしてきたんだよね?」

ベッドに腰掛けながらカイはキョウコの目を見て話しかける。
部屋に入って立ち止まったまま、まともに目を合わせられないキョウコは俯きながら返事をする。

「…うん」
「もしかして、俺のこと警戒してる?」
「いや、ちょっと緊張しちゃって…」
「そんなこと言われても手加減はしないけどね。でも心配かもしれないから言っておくけど、お尻叩く以外は手を出したりしないから安心して」

そういうことが気になっているわけじゃないんだけど、いやかと言って気になっていないわけではないけど、ただあなたにドキドキしているんですよ。

といくらキョウコが心の中で叫んでも、当たり前だがカイの耳には届くわけがない。
カイはしびれを切らして立ち上がり、キョウコの手首をつかんでベッドまで引き寄せ、腰を落とすと自分の膝の上にキョウコを腹ばいに乗せた。

「大学怠けてること、叱って欲しいんだろ?話はメールで聞いたから、今からは反省する時間だよ」

バシッ!

一発目の平手がスカート越しのキョウコのお尻に当たった。
いくらお尻を叩かれたいと望んでいたとは言え、お尻を叩かれるのは屈辱的な感情と鈍い痛みが伴い、キョウコの心と身体は少し混乱していた。

二発目三発目と回数が重なるごとにカイの力が強くなっている気がした。
女の子のお尻を叩くのが久しぶりだったカイは、気持ちの高鳴りを抑えながらお仕置きしていた。
彼は膝の上に乗せて泣きそうになりながらもお尻叩きを耐えている女の子を愛おしく感じてしまう性分なのだ。
一打一打丁寧にお尻に響くような平手を落とすように細心の注意を払っている。

スカートの上からだとは言え、カイの平手は結構な痛みがあった。
四十回をこえたあたりだろうか、無意識のうちにお尻が叩かれることから逃げようと左右に揺れ始めた。

「動いていいって言ってないけど」

カイの手が止まった。

「ごめんなさい、痛くて…つい」

そんな言い訳をしたところででお尻叩きが許されるわけでも、優しくなるわけでもないことはキョウコも重々承知の上であった。
ただお尻叩きが思ったより痛かったのは事実で、既にこの時点で苦しそうな声を何度かあげていた。

「大学サボってるんだろ?それって良いこと?」
「…ダメです」
「わかってんじゃん。じゃあ悪い子はお仕置きだな」

スカートの上からのお尻叩きで終わるわけがないことは、メールでのやりとりで話し合いをしていた。
敢えてキョウコの羞恥心と恐怖心を煽るために、カイは説教をしているのである。
その説教の効果は高く、キョウコはカイの言葉に絶望を抱き、 しょんぼりと頭をうなだれていた。

「下着おろして直接お尻叩くから、いい子で反省しなさい」

そう言うとカイはキョウこのスカートの裾をまくりあげ、下着を一気に膝までおろした。
キョウコのお尻はすでにピンク色に染まっていた。
男性経験はあっても、丸出しのお尻を叩かれる経験はないので、キョウコの頭の中は真っ白になり、顔は真っ赤になっていた。

カイのお仕置きは一打一打しっかりと平手をお尻に打ち込んでいく。
薄っすらと平手のあとがキョウコのお尻に残る強さで叩いているので、キョウコは動かないよう耐えられるのか自信がなかった。
右、左、真ん中とまんべんなくお尻が赤く染まっていく。

「…ぁっ…っっ…はぁ…っん」

痛みに我慢しているキョウコの声がとても可愛かった。
この声が頻繁に聞こえ始めてからが、カイの中で本番が始まるといっても過言ではない。
今までの叩き方の強さに、手首のスナップをきかせた平手を丁寧にキョウコのお尻に打ち込みはじめた。

「…ぁあ!…ごめんなさいっ…ったぃ…」

すでに真っ赤になっているお尻に、強めの平手で重ねて叩かれるのは、叩かれたいという欲望を抱いていたキョウコでさえ、到底耐えられるレベルではなくなっていた。
動かないように我慢していた足は、キョウコの気持ちとは裏腹にジタバタと小刻み動き始めた。

「動かない!」

バシッ!

お尻を叩いている強さと同じ平手が、キョウコの太ももに落ちてきた。

「ぁあ!ごめんなさいっ!!」

カイのお仕置きは黙々と続いていく。
これ以上厳しくされないように我慢して耐えているキョウコから出る声は涙声になっていた。
自分ではもう十分反省しているとキョウコは思っていても、カイが反省していると判断するまで終わらないお仕置きを泣きながら我慢して耐えるしかなかった。

「…ふぇ…ごめんなさい…ぁあん…ごめん…なさいぃ」

下着をおろして叩き始めてから、とうに百回はこえてしまっているのだろうか、カイの右手はキョウコのお尻と同じくらい赤く腫れてしまっていた。
お仕置き初心者を相手にするときには、加減というものがとても大事だということを知っているカイは、そろそろ切り上げどきかと思い、叩く手を止めた。

「反省した?」
「…はい」
「じゃあ今日のお仕置きは終わり。膝からおりて下着あげていいよ」


──


これが彼と彼女の初めての出会いだった。
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